日常に溶け込むコンテンツを産み出す 注目の動画メディアの背景に込められた思いとは?【株式会社バベル代表インタビュー】
今は、電車を待っている間のちょっとした隙間時間にスマホを開くだけで多くの情報が流れ込んできます。そして、誰かのツイートであったり、インスタグラマーの投稿だったりとその種類は多岐に渡ります。
そんな私たちの生活に当たり前に存在するコンテンツを産み出している会社の一つが株式会社バベル。今回はその代表を務める杉山大幹氏にお話を伺いました。
人々の生活に溶け込むコンテンツを作るバベルの根底には代表・杉山さんの人間性が現れています。
【プロフィール】
杉山 大幹(すぎやま たみき)
2013年12月よりEastVenturesのアソシエイトとして勤務後、メルカリ(ソウゾウ)の新規事業に携わる。2017年8月、株式会社バベル共同創業。
起業が当たり前の環境に身を置いたから今がある
――杉山さんは大学時代は何をしていましたか?
杉山:
大学1年次から創業期のBASEやメルカリといったスタートアップが同じシェアオフィスにいる環境でEastVenuresでアソシエイトとして働き、リサーチや投資先の支援をしていました。
その後、投資先のスタートアップ企業で新規事業の立ち上げに携わり実務経験を積み、投資サイドとスタートアップサイド両側面から事業を見ることが出来ました。
また、メルカリの子会社のソウゾウで創業初期から1年間Webのリリース、アプリのグロースなどにも携わりました。
――色々な経験をされてきたんですね。「起業」が杉山さんの選択肢に入ったのはいつ頃ですか?
学生時代は、自分が将来起業するなんて思っていませんでした。
大学入学時に、とにかく何かやろうと思いサークルの新歓にも行きましたがしっくり来なかったので、高校時代からの友人とインターンを始めることにしました。
丁度その頃に、90年代後半から2000年代前半のインターンネット史が書いてある「ネット起業!あのバカにやらせてみよう」という本を読み、松山太河さん(ベンチャーキャピタリスト・EastVenturesパートナー)の名前を知りました。
その直後に自分のFacebookのフィードに太河さんがEVのアソシエイト募集しているという投稿が流れてきて「あ、あの本に載っていた人だ」と思い、応募することにしました。
EVでアソシエイトをしていた時に、周りがものすごいスピードで成長していく姿を間近で見て、スタートアップやIT業界に興味を持ち、自分でも何か始めたいと思い始めました。
当時一緒に働いていた先輩もほぼ皆といっていいほど起業や独立をしていたので、起業することを当たり前に感じるようになっていましたね。
――そして大学卒業と同時に起業することにしたんですね。
そうです。
以前から自分で事業を始めたいと考えていたので、大学卒業の今がそのタイミングかなと思いました。また、その時が一緒に働きたい人と起業すること出来るタイミングだったからです。
一人の力では出来ないことも多いので、それぞれの能力やスキルを持った補完関係を築ける人と働くことができたのは良かったです。
――なるほど。先ほどの話の中のもありましたが、杉山さんは普段から本をよく読むんですか?
そうですね、本は良く読みます。
太河さんから教えてもらった「ハッカーと画家」というYcombinator創業者のポール・グレアムのエッセイがオススメです。
「スタートアップとは何か」「社会について」など色々書いてあるので面白いですよ。
子供の頃から読書が好きで、一時期は1年で100冊以上読んでいたと思います。伝記や小説が好きなので今もよく読みますし、尊敬している人のおすすめ本はほぼ全て読んでます。
人々の生活に浸透するメディアへ
――事業の説明をお願いします。
「手に取るように商品のことがわかる動画メディア」を目指しています。ECサイトでは、実際の商品を手に取ることができないので、サイズや使用感など分からない部分があると思います。その部分を自分たちの作る動画で説明していきます。
――なるほど。そこでガジェットやおもちゃを選んだ理由はありますか?
自分自身もFacebookやYouTubeなどの動画コンテンツを普段からみるのですが、おもちゃの開封動画やガジェットのレビュー動画の中には月間100万回再生されているものがあることを知りました。そして、そういった動画でのレビューが、グローバル規模で伸びているということを知り事業としての可能性を感じました。
おもちゃといっても、子供が見て楽しい動画と親が見て興味を惹かれるコンテンツは違います。そういった点も考えた上でコンテンツを提供していきたいと考えています。
――現在は短尺のコンテンツがほとんどですが、長時間のコンテンツを作る可能性はありますか?
動画領域全域でやっていきたいと考えているので、先のタイミングではあるかもしれません。
サイネージ(従来の看板やポスターの代わりに、液晶ディスプレイを用いるもの)であったり、テレビショッピングであったりと動画が活躍する場面は大きく、さらに増えていくと見込まれるので相当大きい市場の中で戦えると想定しています。
――今後はどのように事業を拡大していくつもりですか?
ガジェットやおもちゃだけでなく、全年齢を対象としたオールカテゴリの動画を全てのプラットフォームで配信してユーザーに価値やコンテンツを届け続けます。
バベルが作った動画という事を前面に押し出すのではなく、普段見ていたAというサイトの動画とBというサイトの動画が実は両方ともバベルが作っているものだったんだ、そんな風になると嬉しいです。
それくらい、みんなの生活に浸透していくことがベストだなと思っています。
これからのコンテンツ消費は 単時間で気軽に
――今は、隙間時間を埋めるようなコンテンツがとても人気ですよね。
そうですね。それに伴い、コンテンツ1つ当たりの消費時間は短くなってきています。
スマホのある生活が当たり前になり、ちょっとした隙間時間でさえ「暇だ」と感じスマホを取り出してその暇を埋めようとしています。長時間の動画を続けてみるという行為自体が、スマホが浸透した現代においてはあまり適していないかもしれません。
スマホというデバイスの性質上、受動的なコンテンツ消費が増えているのでユーザーの負担にならない短い動画や写真などのコンテンツがもっと求められると思います。僕自身もスマホで、長いテキストや長時間の動画視聴は面倒だなと感じてます。
――確かに10分間集中して1つの動画をみるよりも、3分の動画を3つ見るほうが気軽な気がします。
「短時間で 気軽に」ということはキーワードかもしれませんね。
例えば、これまでは不要品を売る時は自分自身でリサイクルショップに持っていっていました。その後、ネットオークションが主流になりましたが、決済されるまで待たされたりと自分の手元にお金が入ってくるまでには今よりも時間がかかっていました。
しかし、それを短時間で、さらに気軽に出来るようにしたのがメルカリですよね。
――この流れに乗って、消費されるコンテンツも変わっていきますね。それに対して杉山さんはどう考えていますか?
ドワンゴの川上さん(株式会社ドワンゴ取締役CTO 川上量生氏)が執筆されたコンテンツの秘密という本を読むと、コンテンツは(1)メディア(2)対象(3)方法の3つの点で分類されるそうです。その分類は、アリストテレスの詩学に書いてあるそうです。
人間が認識できる情報量は少ないので、分かりやすいコンテンツが求められます。そしてコンテンツが流行ると、パターン化して飽きられるということを繰り返しています。
例えば、パズドラが流行れば似たようなゲームがすぐに生まれるように、映画も音楽も全て一緒だと思います。
だからこそ、メディアの特性に合わせて、ユーザーが理解しやすい方法でコンテンツを提供し続け、ユーザーに求められるパターンを見つけることが出来、飽きられる前に新しいパターンを探すことができる会社やクリエイターは強いと思います!
――これからも時代に合ったコンテンツを楽しみにしています!