【YJキャピタル堀氏×Shippio佐藤氏】 商社マンから起業の道へ 影で支えたCode Republicが提供する価値と堀氏の考える事業選定方法
Code Republic(コード・リパブリック)は、East VenturesとYJ Capitalが運営するインターネット・スタートアップの成長を最大限に加速させる、3ヶ月間のアクセラレータープログラム(大手企業がベンチャー・スタートアップに対して協業・出資を目的とした募集行為を開催するもの)です。
元は商社マンとして活躍していた佐藤氏が起業に至った経緯から、その起業の最初の段階を支えたCode Republicが起業家に提供している価値について詳しく伺いました!
YJキャピタル代表取締役である堀氏が教える事業選定のポイントは必見です。
「商社で出来ることはやりきった」10年目で起業を決めた理由
ーーCode Republic一期生である佐藤さんは、新卒で商社に就職し10年経ってから起業に至っていますが、それまでの経緯について伺ってもよろしいでしょうか?
佐藤:
大学時代にファンドでインターンをしていたので、ベンチャー界隈とは関わりがありました。
しかし、就職先を選択する際、10年後を考えた時にファンドなどの小数精鋭の企業にいくよりも、同期100人が世界中にちらばっている商社の方が面白いと考え、商社へ就職することを決めました。
少数精鋭の企業も良い面はありますが、そこの文化や価値観で固まってしまうと思ったので、とりあえず大企業に行って色々な友達を作ろう!と思い商社に入社しました。
――そうだったんですね。では、なぜ10年経ってから起業に踏み出したのですか?
佐藤:
10年間の間に、商社でやるべきことは一通り全部やったと思えたことが最大の理由です。
実際に、原油のオペレーター・マーケティング・トレーダー、企業投資・VC(ベンチャーキャピタル)、中国全体の三井物産を見る経営企画などを経験しました。
20代のうちは伸びしろもあり、色々なことをやらせてもらえたので、自分の成長を感じることが出来ました。
しかし30代になると、後輩の指導や中間管理職的な役割がすごく増えてきて、「僕はまだまだ成長できるのに、このままだと成長に時間がかかるな」と思うことが増えました。
そこで、これからも成長していくためには成長サイクルの早い環境に身をおかなければならないと考え、「起業する」という道を選択しました。
――なるほど。現在行っている事業はどういったものなのでしょうか?
佐藤:
一言でいうと、企業間の国際物流を圧倒的に簡単にするというものです。
この先日本の人口が減っていく中で、どうしても内需は弱くなります。海外との取引が圧倒的に簡単になることで、誰もが簡単に輸出入が出来る世界を目指しています。
将来的には日本の貿易を牽引するインフラの一助になれたらなと思っています。
ーー国際貿易だと、関税など法律の問題も関わってくると思うのですが、そのような知識も商社時代に得たものですか?
佐藤:
そうですね。商社時代に法務や財務なども関わってきました。
仮に知らないことがあっても、調べ方やどこまで調べて誰に聞けば良いのかという感覚はあるので、商社時代の経験が今に活きているのかもしれません。
ーー今は国内に目を向けていると思うのですが、長期的な目標はございますか?
佐藤:
まずはアジアを代表する国際物流スタートアップになりたいですね。でも、まだまだこれからです。
起業のファーストステップを支えるCRが提供する価値
ーー佐藤様を始めとする多くの起業家に、起業の最初の段階に必要なものを最高のレベルで提供しているCode Republicのプログラムですが、具体的にはどういったものを中心に提供しているのでしょうか?
堀:
我々は、2016年8月からアメリカのY Combinator(カリフォルニア州にあるベンチャーキャピタル。主な出資先にDropboxやAirbnbがある。)をロールモデルとし、今までの日本にはないクオリティーの高いアクセラレータプログラムを追求してきました。
起業の際に元となる資金の提供、経験豊富な起業家のメンタリングやアドバイス、YJキャピタルとEast Venturesに関連するVCや投資家のネットワークのご紹介などをの3本柱としています。
ただ、2年間を振り返って分かってきたことがあります。
創業間もない頃は、最初に考えたプロダクトやビジネスモデルはうまくいかないことがすごく多いんです。
そこで大事なのは、経験豊富なメンバーが事業の成功角度をあげるためにビジネス面やプロダクト面はもちろん、将来の資本政策を踏まえて経験に基づくアドバイスをするということです。
また、僕らが定期的にメンタリングをすることによってサボれない環境、一日も早くプロダクトをリリースするという環境を提供することもできます。
1日も早くプロダクトをリリースするというプレッシャーに関しては、メンター陣だけでなく他のプログラム参加企業から感じてもらうことも重要ですね。
やっぱり隣の起業家が頑張っていると「自分たちも頑張らなくてはいけない」という気持ちになりますから。
佐藤:
ピアプレッシャーですね。
堀:
そうです。今は、ピアプレッシャーを始めとした横のつながりを生みだすことに力を入れています。
横のつながりを生み出すために、まずは、物理的な空間の提供しています。同じ空間で顔を合わせることで、自然と横のつながりが生まれますからね。
そして、「先輩・後輩に負けたくない」や「こんなことを教えてもらいたい」という思いを起業家が抱くことが出来るようなプログラムの創出を目指しています。
例えば、slack(アメリカ発のビジネスコミュニケーションサービス)などのツールを利用し、現役生と卒業生がいつでもプロダクトのグロースハックやPRについて質問できる環境を整備したり、自発的に活動できるようなオンラインのコミュニティを作っていこうと考えています。
経営のスペシャリストが教える事業選定方法
――先程、起業家の半数近くが最初の事業からピボットするとおっしゃっていました。
では、もし堀さんがこれから事業を始めようとしている人にアドバイスをするなら何を伝えますか?
堀:
何が正しいという事は言えませんが、事業をピボットしたいと相談しにくる起業家に、事業選定のアプローチ方法として5つのステップを紹介しています。
1.事業アイディアを100個あげる
堀:
どの方法が正しいかどうかを言い切ることはできませんが、まず、事業アイディアを100個あげましょう。
佐藤:
100個考えるっていうところでいうと、ただ100個単発で考えるだけではダメなんですよね。100個考えるの本質的な意味は、網羅的に考えることです。
思いつきで書き出した100個ではなくて、網羅的に並べた100個のアイディアの中から、時間軸的に3〜4年後に流行るだろうというところに目をつけられると良いのではないかと思っています。
2.100個のアイディアを評価する
堀:
次に、100個のアイディアを1つ1つ評価しましょう。
・市場があるのか
・誰の何の問題を解決するのか
・既存のサービスに比べて優位点は何なのか
・儲かるのか
・2-3年後に可能性がありそうな分野か
という項目で評価します。
3.とにかく詳しくなる
堀:
その後、その領域について、誰よりも詳しくなることが大事です。
例えば、佐藤さんのように貿易に関する知識を元から持っている事はアドバンテージになります。
その事業は創業したあなたしか取り組んでいないのだから、誰よりも詳しくなって情報で勝つことが重要です。
4.決定する
堀:
その領域について詳しくなった後は、その軸で取り組むのかを最終的に決めます。
そして決める時は「絶対にやるぞ」という覚悟を持って決めましょう。
5.ターゲットユーザーにヒアリングをしまくる
堀:
決めた後は「とにかくターゲットユーザーにヒアリングをしまくれ」という話をよくしています。
有安氏(コーチ・ユナイテッド株式会社創業経営者。エンジェル投資家。)も「良いと思ったサービスについてはモック(ウェブサイトやアプリのデザインで使われる方法)を作って、ターゲットユーザーにモックを見せて反応見まくる。小さく検証をぐるぐる回すのが大事。」と言っています。
そういう面でもユーザーに対するヒアリングは重要です。
最初のアイディアはなんでもいい 応援したくなる起業家とは
ーー投資している側から見た、応援したくなる起業家・チームとはどのようなものですか?
堀:
先ほど申し上げたように、1番最初に考えたビジネスアイディアは必ずしも大成功するとは限りません。
なので、どちらかと言うとプロダクトを早く作り、早く検証できる開発力があるチームなのかどうかを重視していますね。
また、事業を運営するためには組織を求めていく力が必要になります。
そこで、経営陣のキャラクターや人を巻き込む力、採用する力、投資家に可愛がってもらえるようなキャラクターなのかというところもポイントです。
そうはいっても、色々なタイプの人がいるので面接を通してその人の「人間力」を見ています。
あとは、この間のCRのイベントで佐藤さんが「バタラさん(衛藤バタラ氏・EastVentures株式会社代表取締役)のいうことばかり聞いていてもしょうがないよ」と言っていました。
僕らも本当にその通りだと思っていて、あなたが本当にやりたい事業だったら、僕ら投資家や関係者含めて説得して圧倒するだけのパフォーマンスを持ってきなさい、と。
「ここがうまくいってない」「ここがダメだと思うよ」と言われた時に、諦めの早い人が多くて、起業してやりたい事業をやっているはずなのに、生徒と先生のような関係になってしまっているパターンがたまにあるんです。
こちらは、そのような関係を望んでいる訳ではないので「学校と勘違いされては困るな」と思うことはあります。
佐藤:
たしかに、答えを人に求めるのは違いますよね。結果を持ってくることが一番重要だと思います。
大人ってみんな言うことが違うので、ある人が「違う」と言ったとしても、他の人は「良い」と言うかもしれないですし。
聞くときも、全てを頷いて聞いていてはダメだと思っていて、「いや、ここはこうじゃないですか?」と聞くことでもう一歩深いアドバイスを聞けます。
そういった押し返し力が大事になってくるのではないかと思っています。
日本一・アジア一を本気で狙いに行くCode Republic
ーー最後に、CRから起業家たちへ熱いメッセージをお願いします。
堀:
現時点で10社卒業していて、その中で5社が既に資金調達に成功しています。さらに年内にはもう2、3社調達する見込みが立っています。
マーケットの風潮として、シードステージの起業家にとっては比較的資金調達はしやすい環境になって来ているとは思います。
しかし、様々な角度から3カ月間に渡ってメンタリングしていく中で、起業家のみなさんの成長が大きな要因なのだろうと思いました。
ただ、まだ道半ばといったところなので、もっともっと成功してもらって、立派な起業家になってもらうが心からの願いです。
その上で、「あの人はCode Republicの卒業生だよね」といった感じでCode Republicが広まってくれると嬉しいなと思います。
――これから起業する方に向けて、メッセージをお願いします。
堀:
馬鹿げているかもしれませんが、バタラさん含め、EVのみなさんと日本で1番、アジアで1番のアクセラレータプログラムを作ろうという話をしています。
成功を目指してメンバー全員が死ぬ気で頑張っているので、そういうときほど手厚いサポートが受けられてオススメです(笑)一緒に頑張りましょう。
【プロフィール】
堀新一郎(ほり しんいちろう)
慶應義塾大学(SFC)卒業後、フューチャーシステムコンサルティング㈱(現フューチャーアーキテクト㈱)を経て、 ㈱ドリームインキュベータ(DI)にて経営コンサルティング及び投資活動に従事。 2007年よりDIのベトナム法人立ち上げのため、ホーチミン市に赴任。 ベトナム現地企業向け投資を行う50億円のファンドのソーシング及びバリューアップに携わり、 5年半に亘るベトナム駐在を終え2012年に帰国。 2013年よりヤフー㈱に入社しM&A業務に従事。2013年7月よりYJキャピタルへ参画。 2015年1月COO就任、2016年11月より現職。アクセラレータープログラムCode Republic共同代表及び、ソフトバンクのグループ内新規事業開発・投資会社である SBイノベンチャー㈱取締役兼務。
佐藤考徳(さとう たかのり)
1983年生まれ。2006年に三井物産入社。石油部にて原油トレーディング業務に従事。上海復旦大学への語学留学やMitsui Global Investment(CVC)への出向等を経て、2014年からは中国総代表室(在北京)にて三井物産の中国戦略全般の企画・推進を行う。2016年6月、北京で同じく駐在していた土屋(08入社)と共に国際物流に特化したインターネットサービスを開発・提供するサークルイン株式会社を立ち上げ。YJ CapitalとEast Venturesが主催するアクセレータープログラム"Code Republic"の一期生に採択される。