【基本編】誰でもわかる!決算の読み方 :Step 1 決算を読むにあたって必要な用語とは?
決算に関する著書や「決算が読めるようになるノート」が話題になるなど、働く人にとって、決算を読めることが1つのスキルとして話題になっています。
そんな中、「常に業界地図を持ち歩いている」という、Stockclipのチーフ・アナリストの廣川氏が「決算を読める勉強会」を開催。当日も多くの人が訪れた勉強会を、取材してきました。本稿でその内容をご紹介いたします!
プロフィール
廣川航
1995年生。現在慶應義塾大学商学部4年。2009年より東洋経済「業界地図」にハマり、企業分析の世界へ。2014年よりTechouseやトーマツベンチャーサポートにてインターン。トーマツベンチャーサポートではFinTechなどのリサーチを担当し、日経BP社の「FinTech世界年鑑2016-2017」も執筆。2017年よりStockclipにてチーフ・アナリストを務める。
Twitterアカウント「@tosyokainoouzi」
伊丹郁人
1998年生。現在上智大学経済学部1年。小学生の頃から複式簿記で家計簿をつける。高校から専門学校で会計を勉強し、現在はUSCPAの勉強中。2017年よりイーストベンチャーズでアソシエイトを務める。
Twitterアカウント「@gamendhsy12727」
Step1:用語を知る
はじめに、現在East Venturesでインターンをしている上智大学一年生の伊丹くんが基礎部分について解説しました。
伊丹:East Venturesでインターンをしている伊丹です。高校のころから会計の勉強をしていて、現在も財務と会計の勉強しています。本日は、基礎の部分について説明します。
まず、決算(=財務諸表)を読むにあたって読めると便利なのはBS(バランスシート=貸借対照表ともいう。一定時点における企業の財政状態を示す一覧表のこと)、PL(損益計算書=会社の一会計期間における経営成績を示す決算書)、キャッシュ・フロー計算書で、これらが読めると企業分析にも役立ちます。
BSとPLの繋がりが分かるとキャッシュフロー(お金の流れ)を理解できるようになり、さらに大きな指標を理解することが出来るようになります。
①貸借対照表(BS)
まず、BSについて説明していきます。BSは、「資産」と「負債」と「純資産」に分かれています。
そして、BSは企業の財政状態の“ストック”をあらわしています。
起業して1年目に、備品や建物、銀行からの借り入れなどのお金の動きが生じますよね。
それが積み重なったものがBSです。
会計試算(総勘定元帳に記載のある金の流れを集計した一覧表で、総勘定元帳の合計額や残高が一目で分かる資料)は1年で区切りますが、BSはあくまで起業してから今までのストックをさします。
つまり、決算時、会社はどんな財産(資産)を持っていて、その財産の元になるお金(負債・純資産)はどうやって集めてきたかがわかるようになっています。
純資産と負債の例ですが、不動産を購入する際に必要になるお金を株式で集めた場合は「純資産」、銀行から借り入れた場合は「負債」になります。
負債は返さなくてはならないお金で、純資産は返さなくていいお金です。
資本金は純資産になるため、起業した際に元となる資本金が1千万円だったら、純資産のところに資本金1千万円が入ります。
ちなみに、最近話題の内部留保(これまでの利益の貯蓄)は「純資産」に含まれます。
②PL(損益計算書)
次に、PL(=損益計算書)の説明に入ります。
PLとはどれだけ売上がたって、そのためにどのくらいの費用がかかり、どのくらいが利益として会社に残ったのか?について表しています。
BSはストックだという話をしましたが、PLはストックではなく“フロー”を表していて、そこには1年間の利益や費用が載っています。
具体的にPLから読み取れるものは、商品を売って得た「売上高」やそこから会社に残ったお金はいくらなのか?というのがわかる「利益」で、「利益」にもいくつか種類があります。
まず「売上総利益」は、「売上」から「製造原価(物を作るためにかかったお金)」や「仕入原価(物を売るために仕入れたお金)」を引いたものです。
次に「営業利益」は、「売上総利益」から販売するためにかかった広告宣伝費などの「販売費」やオフィスなどの費用が含まれた「一般管理費」を引いた「営業利益」です。
この営業利益は、本業の儲けとも呼ばれます。
次に、「経常利益」は、営業利益から営業外費用・収益を引いたもので、「けいつね」と呼ばれることもあります。
ここには、銀行から借りたときに払った利息や、貸付けにより得た利息などの本業以外でかかった費用や収益などがのってきます。
そして最後に、「純利益」は、災害や株式を売却して一時的に発生した利益や損失を入れて、税金を引いたものです。
これらの数値は、企業や業界によって収益構造や費用構造などが大きく異なり、それぞれ特徴があるので、「財務諸表」を読むことでそれらも知ることが出来ます。
ここで大切なのは、「率(%)」です。
一般的にテレビなどでは、「年商〇〇億円!!」などと言われて「すごーい!」と言われることがありますが、これだけで企業の良し悪しを測ることはできません。
大切なのは、営業利益率や売上成長率、販管費構成比などを同業他社などと比較することです。
中でもベンチャー企業の場合は、売上高の成長率はもちろんのこと、「どれだけ利益率をあげることができるか」が重要な指標になってきます。
もし成長が止まっているなら利益率を上げていく必要がありますよね。先ほども言ったように、営業利益は本業の儲けで非常に大事な指標ですので、しっかり確認しておく必要があります。
③キャッシュフロー計算表
さらに、会計で営業利益が100億円あったとしても、手元にすぐ現金がはいってくるのではありません。
例えば、物を売ってもすぐ現金がもらえないのと同様に、売掛金といって、キャッシュとしては手元に届くのは1.2か月後、ということが一般的です。
なぜ、黒字倒産(利益はあるのに現金がない状態で倒産すること)が起きるのかというと、キャッシュが入るタイミングと利益のズレが生じるからです。
実際に、100億円の利益をあげていたとしても、今すぐに支払わなくてはならない売掛金が200億円あるとしたら、その分の支払いが出来ずに黒字倒産するという仕組みです。
このことからも分かるように、キャッシュの重要性は非常に高くなっています。そこで、活用することができるのが「キャッシュフロー計算表」です。
キャッシュフロー計算表では、現金の出し入れを行う投資活動、資金の貸し借りを行う財務活動といった現金の流れを把握することが出来ます。
利益は出ているのにキャッシュフローがずっとマイナスである場合は、キャッシュが入ってきていない状態なので、注意して原因の解明をする必要があります。
ここに、インターネットや決算説明会などでよくでてくる指標を集めてみました。
まずは、頻出のROE(=株主資本利益率 資本金を使ってどれだけの利益をあげたのかを分析するための指標。ROEが高いほど資本金を効率的に活用していると言える)です。
これは、銀行から借り入れるのではなく、株主が出資したお金がどれだけ効率的に使われているのかという指標になっています。
あえて、売上でなく純利益を基本的に使っています。純利益は会社に最後に残ったお金のことで、売上が高くても純利益が残っていないと、効率的にお金を運用できていないということになるからです。
しかし、ROEにもいくつか問題点があります。
ソフトバンクを例にとって説明します。ソフトバンクは、沢山お金を借りて、その借りたお金で売り上げを上げている企業です。そうやって売り上げを上げるために借金をすることで、ROEは上がってしまいます。
そのROEの欠点を補うのがROIC(=投下資本利益率 投資額に対してどれだけ利益を生み出しているかを示す)という指標です。
これは、事業活動のために投じた資金をどのように運用して効率的に利益に結びつけているかを示すものなので、借りてきた負債も考慮されているという点でROEの欠点を補っている印象を受けます。
EBITDAは、税引前利益から支払利息や減価償却費を引いたものです。減価償却費とは、建物などの長期で利用できるものを購入した場合に、購入年度に費用全額を計上するのではなく分割して少しずつ費用計上する仕組みのことを指します。
例えば、27万のパソコンを10年間使えるとしたら、減価償却費は2万7000円になります。
営業利益は本業の利益ですが、たくさん借り入れしているということは、それだけ支払利息を払っているということです。
ROEを上げるためには、お金沢山借りてくるか、売上高をさらに上げるかの2つの方法があり、このバランスが非常に難しいです。今後、こういった指標を活用していけるといいなと思います。
あとがき
勉強会の前半の様子を見ていただきましたが、いかがでしたでしょうか。次回の記事では、イベントの後編で、実際の目論見書を見ていきます。
また、本記事のイベントに登壇された廣川氏がチーフ・アナリストを務めるStockclipは、世界中の決算をスマホで見れる決算アプリです。本記事を参考にしながら、気になる企業の決算を見てみてはいかがでしょうか。
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次回:誰でもわかる!決算の読み方【応用編】