皆さんは「TNK」を知っていますか?

TNKは、起業家を続々輩出する東大起業家サークルです。出身者にはナイル株式会社の代表取締役である高橋氏、株式会社GunosyのCEO福島氏など名だたるメンバーが揃い、「ただのサークル」ではない、特出した存在感で君臨しています。

しかし、大学のサークルから起業家が生まれるなんて、一体どんな活動をしているんだ…?と疑問に思う方も多いはずです。

そこで今回は、TNKさんに密着させていただき、気になるその活動内容に迫りました!

 

そんなTNKの活動のなかで、今回はEast Ventures様協賛イベントを取材しました。イベントのタイトルは「【フリークアウト佐藤氏登壇】収益構造の変遷から読み解く、広告業界最新トレンド」

若くして数々の事業を成功させるほか、LINEと提携し、広告事業の最先端で活躍する佐藤氏を招いたイベントです。

 

「East Ventures」はアーリーステージのベンチャーキャピタルの会社で、日本・東南アジア・アメリカを中心にシード投資を行っています。

海外を含め5つのオフィス拠点を有し、日本唯一のユニコーン(※企業としての評価額が10億ドル(約1,250億円)以上で、非上場のベンチャー企業)として活躍するメルカリやFreakout、ビズリーチ、gumi、グノシーなど日本のIT業界を牽引する企業への投資実績を誇ります。

ベンチャーキャピタルの第一線として利益をあげる一方で、このような学生向けの協賛イベントも行っています。 

 

このように、TNKでは週に1度、特定の領域に精通した方々に勉強会をしていただいているそうです。各領域の大物から直接話を聞けるTNK、恐るべし。

特別にイベントを取材させていただいたので、今回、その内容を全文掲載致します!

 

 

収益構造の変遷から読み解く、2017ー2018最新トレンド 

 

みなさんこんばんは。フリークアウトの佐藤です。よろしくお願いします。

「収益構造の変遷から読み解く、2017ー2018最新トレンド」というお題をいただきまして、広告の話を中心に30〜40分くらいお話していければな、と思います。

 

 

 

 

まず自己紹介ですが、今はフリークアウト・ホールディングス という会社の代表をしています。2010年10月に会社を作ってグローバルでだいたい10拠点、展開しています。あとはもう一個、イグニスという会社を作って同じく経営をしております。

 

あともう1つ、M.T.Burnという会社も経営しておりまして、これは2013年12月に、フリークアウトとイグニスの合弁会社としてスタートしました。2016年の1月にLINEさんに株式の半分を譲渡しまして、LINEの広告事業、LINE ads platform を共同運営するという形でやっております。

ちょうどLINE の事業セグメントでも、少し前から広告が No.1 になりました。

 

投資の方は、友人 8人とファンドをやっておりまして、北米のスタートアップ23社ぐらいに投資しています。すべてテクノロジー企業で、フィンテック、AI企業を中心にやっています。

一部北米以外、例えばナイジェリアやバングラデシュなどのスタートアップも含まれます。

あとは個人でのスタートアップ投資もしていて、こちらは 30 社くらいです。みなさんが知っているところですと「kurashiru」をやっているdelyさんとかですね。

 

今日はTNKのみなさんが中心だと思いますので、起業をされる方はすぐに連絡してください。

このマーケットはEast Venturesさんが強すぎて、すでにいい会社にはほとんど投資しちゃっている状態なので、起業をされる方は、是非とも太河さん(=East Venturesパートナー、松山太河氏)より先に、私にご連絡いただければと思います。

(会場:笑)

 

  

起業家なら知っておくべき、広告ビジネスの収益について


ということで、本題の方にいきたいと思います。

広告のお話をする中でも、今日、この会場にいる方の中に「私は新卒で広告代理店に入りたいのでここにきました」という方はあまりいないんじゃないかなと思うんですよね。

 

せっかく起業サークルですから、ソフトウェア領域やテクノロジー領域で起業を志すという方が多いんじゃないかなあと思います。ただ、そういう方たちも、広告ビジネスのことは、絶対に知っておいた方がいいんですよ。

 

まず、本題に入る前に、テックセクター(※テクノロジーセクターのこと。テクノロジー領域。)で起業を志すみなさんに、1分くらいで広告業界のビジネスについて知っておいた方がいい理由をお話します。

 


 

大きい企業ほど広告収益に依存する傾向がある

 

今、時価総額トップ20の企業の内訳でインターネットソフトウェア企業が4割強ぐらいいます。その中の半数が、広告収益に利益の半分以上を依存しています。

 

さらに、ユニコーン企業 70 社程度を時価総額順に並べてみると、上位 10% の 6 割、20% の過半数が「広告収益が売り上げの半分以上を占める企業」となります。

時価総額が大きくなればなるほど広告収益依存が色濃くなる構造になっているんですね。

つまり、でかいインターネットソフトウェア企業は、広告ビジネスの収益にかなり依存しているという状況です。


例えば、みなさんが今、日本やアジアで超流行るアプリを作ったとして。その時もおそらくは、広告ビジネスが収益の中の重要な部分を占めるようになるということですね。

  

 

広告ビジネスの成り立ちと、その優れた仕組み

 

広告ビジネスは“権力者による圧政”から、生まれた

 

最近の広告ビジネスに触れる前に、そもそも広告ってどういうものかを簡単におさらいしておきます。

 

広告は、古くは瓦版や洞窟の壁画などにもその原型になるようなものはあったと言われていますが、いわゆる今の一般的な形(=メディアがコンテンツの近くにスペースを確保して、「広告を掲載する権利を売りますよ」というようなビジネスモデル)がしっかり確立したのはここ200年くらいの話です。

 

この経緯は、前後にフランス革命があって、王政から共和制へ移行し、封建的な特権の撤廃が進んだタイミングなんですね。

その時に、メディアをやっていた人たちが何を考えたというと、市民がきちんと知識を持って権力を監視しないと、権力者がむちゃくちゃ言い出して市民を困らせる、ということです。

それで「みんな新聞を読んだ方がいい」と考えるようになりました。

 

 

広告の本質は、「知」を安価にばらまくこと

 

広告費のおかげで、読者が払う金額は半分に

 

ただ、当時は講読料がすごく高かったんですね。

そもそもの原価もそうですし、新聞には結構高い税がかかっているんですよ。


 

なので、市民の人たちが毎日新聞を読むというのは、かなり難しかったんです。

「新聞はお金持ちが読むもの」というのが普通だったんですね。

 

なので、購読料(ユーザーが直接対価を支払う)だけで成り立っていたものの半分を広告料で浮かせる、つまり半分は読者から直接集金するのではなく、広告を掲載する第三者からお金をいただくことで必要経費を賄う、という仕組みに変えました。





これにより、読者の講読料を引き下げることができたということですね。

半額になると、わりと普通の人でも新聞も読めるようになったわけです。

 

 

広告の「本質的な価値」とは

 

広告っていうのは、企業がマーケティングメッセージをみなさんに届けるという役割だという風に定義している方が多いと思います。

 

もちろんそれも広告の大きな役割の一つではあるんですけれども、広告のそもそもの本質的な価値というのは、「できるだけ安価に、いろいろな人たちに知恵をばらまく」ということなのではないかなーと思っています。

 

大元は、一つのところに止まっていた人類の知性を、いろいろな人に低単価でばらまく、ということ。その過程の中で副次的な効果として、企業はいろいろなマーケティングメッセージを読者に届けることができるんですね。

 

 

 

広告が持つ「複利的」な仕組み

 

さらに、広告の仕組みの優れているところは、めちゃくちゃ「複利的」だということです。

 

例えば、これ (資料で動画が流れる) はとあるコント番組なんですけど。

実際にこのコンテンツそのものも、広告収益によって、オーディエンスのみなさんに届けられているということになります。これがすごく複利的な構造を持っているんです。


例えばこのコンテンツに対して、一定額を投資しておもしろいコンテンツを作ります。

おもしろいコンテンツは当然、オーディエンスを引きよせます。そうするとメディアはたくさんのオーディエンスを抱えることになる。

たくさんのオーディエンスを抱えると、メディアはより高く広告スペースを販売することができるようになるんですよね。同じ広告枠だとしても、多くの人が見ている広告枠というのは、高く売ることができるんです。

 

 

広告・メディアが持つ“ポジティブな循環”

 

広告枠を高く売れて、余剰収益が生まれると、またより良いコンテンツになるように再投資をする。それによりさらに良いコンテンツが生まれて、その品質が高いコンテンツがより多くの人を引きつける。

それが結果的に広告単価の上昇につながり、さらなる収益性の向上を実現して、それがまたコンテンツに再投資されていく・・・という流れです。

 

なので、ポジティブ・フィードバックが回転していくような構造を持っているというのが、広告とメディアのすごくよくできた仕組みになっています。

広告が複利的な投資を可能にしていったことによって、コンテンツの品質はどんどん上がっていくし、オーディエンスはどんどん増えていって、広告単価が上がって、メディアや企業が潤うという状況になるんですね。

 

 

 

広告ビジネスの仕組み

 

広告ビジネスにおける需要と供給

 

今お話したように、「人間の知性を、その人だけが持っているというようなものではなく、いろんな人が安い価格で享受することを可能にした」ということが広告のすごく大きな社会価値なわけですけども、今度は、「広告ビジネス」について考えていきます。

 

これはあらゆるビジネスの本質でもあるんですけど、「需要」と「供給」なんですよね。

 

で、この図は何かと言うとですね、広告ビジネスに置ける需要と供給ってどういうものかというのを表しています。

 

 


 

供給側(=supply side)は広告枠という「スペース」を提供している。

需要側(=demand side)は広告主の方ですよね。広告を掲載してもらう中で自分たちの商品やサービスを世の中のもっと多くの人に知ってもらいたい、と考える人たちがこれにあたります。

 

そして、需要と供給が結びつけられて、広告出稿が起こる、という仕組みでビジネスが成立していました。

 

 

 

4マス時代の広告ビジネス

 

ただ、4マスの時代(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)は、どういう構造になっていたかというと、サプライ側にすごく希少性がありました。

テレビはそもそも希少産業。新聞も、今さら「新しく新聞社を作って創刊するぜ!」みたいなのはあまりないんですよね。

 

というふうに、サプライヤー側に侵入障壁があったということで、いわゆるデマンドに対してサプライ側がすごく希少性を持っていました。

 

 

 

 

広告ビジネスにおける広告代理店の役割

 

さらに、サプライの供給源をコントロールしているのが、いわゆる総合系の広告代理店と呼ばれる会社です。

 

メディアが持つ広告枠在庫を、先に買いきってしまうことで供給をコントロールするわけですね。

  

なので、テレビなどのメディアは「在庫リスクを負わない」というのと、「セールスパワーをかけなくていい」というような利便性があるがゆえに、このような、販売を委託している状況になっているわけです。

  

そのようにして彼らがサプライコントロールとプライスコントロールをすることで、4マスの時代の広告ビジネスというのは成立していました。

そのため、こういう会社がすごく大きな売上利益を産んで、成長するに至ったということです。

 

当たり前ですけども、需要曲線が上がっていけば値段は上がっていきますから、CMというのは未だにすごく高いですし、サプライコントロールを独占的に販売することができる広告代理店というのは、すごく高いグロス・マージン(売上総利益)で、利益も出るというわけですね。

 

 

 

デジタル時代の広告ビジネス

 

「じゃあデジタルの時代の広告ビジネスの需要と供給はどうつながっているか」というと、このバランスが逆転します。

 

 

 

デジタルの世界においては、供給が無限に増え続けるというような現象が生まれます。これは何故かというと、インターネットメディアを作ることのハードルが年々下がり続けているんです。

 

 

メディアは今や“無限”になりつつある

 

昔は、サーバーを自分でたてて、html 、cssなどの一般的な知識がないと、なかなか自分でメディアを作ることができなかったんですけれども、それが今はCGM(※Consumer Generated Mediaの略。消費者生成メディア)やCMS(※Contents Management Systemの略。コンテンツ管理システム)の仕組みによって、専門知識がなくても、誰だって、小学生だって、自分のメディアを作ることができるようになりました。

 

そうなると、メディアの個体数がテレビの時代や新聞の時代と比べると、比較にならないくらい異常な速度で、大量に増えまくります。

そういう風になると、無限に増え続ける供給のプライシングというのは、ほぼほぼ0に近づいていくんですよね。

 

当たり前ですけど無限のものに価値はないんです。

酸素すら有限だけどお金を払う人はいないわけですから。それと一緒で、供給が無尽蔵に増え続けるマーケットっていうのは、価格破壊が起こると。

 

実際に、(図を指し示しながら) こちらはあるウェブページですけども、ここに広告枠があります。

 

こんな感じでユーザーが勝手に生成する CGM と呼ばれているウェブページって大量にあるわけです。そうすると、1コンテンツが数秒とかの単位で量産されていって、それごとに広告が表示される機会が増えるわけです。そうすると、供給が破裂して、結果的に価格がどんどん下落していく仕組みになっています。

 

 

 

「スペース」ではなく「成果」を売るように

 

 

“成果”に対して料金が発生する仕組みに変化

 

ただ、こうやってメディアやデジタル上のコンテンツが増え続けることで、自動的に価格が下落していくマーケットって、絶対そこで商売したくないじゃないですか。

 

だからですね、デジタルの世界で広告ビジネスをする人は、単に需要と供給にもとづいて、プライシングをしてものを売る、希少性をベースにものを売るということをやめました。

 

00 年代前半ぐらいに「これあかん」と、気づいた人がいるんですね。このままいってもどんどんメディアとコンテンツ、インターネットのページビューが増え続けて、それに伴って広告枠の数も増え続けて、結果的に自分たちが頑張って商売しても1枠の価値が下がっていく、と。

なのでこのまま希少性をベースに価格決定していったらなりたたん、と思い、彼らは自分たちの商売のあり方を変えました。

 

「広告枠」そのものを販売するというのは、供給量が増え続けるのでやってても仕方がない。そのため広告枠を売るのではなく、「広告成果」を売ることにしよう。広告枠は無限に増えていくだけだけれども、広告成果はきっと有限だろう、という考え方ですね。

 

これにより、成果、つまり広告パフォーマンスを売るようにしたというのが、デジタルマーケティングの広告の世界の代表的な形になりました。

 

 

 

広告ビジネスにおける“成果”とは?

 

「それじゃあ、成果ってなんだろう?」わからないと思うので、具体的に見ていきます。

例えば、さっきのウェブページにいきます。

 

そうすると、右側に不動産やさんの物件の広告がでてきます。これまでは、この「スペース」を売っていたので、このスペースに広告を表示することに対して「〇〇円です」というビジネスモデルでした。


しかし、スペースは無限に増え続けるので、こういうビジネスをするわけにはいかない。なのでじゃあ何を売ったかというと、広告パフォーマンスです。この時点でビジネスが成立するわけではなくて、この広告をクリックして、クライアントのページに飛びます。

 

そして実際に、この4,200万円の物件に興味を持って、クリックをして資料請求をし、内見の依頼をした人がいました。

 

このように、広告の「成果」に対してチャージをしていくという形に切り替えた、というのがデジタル広告のすごく大きな発明になっています。

 

こういった成果が出た場合において、広告は広告主から「評価」をされるとういような仕組みになっています。

これは全然違うんですよね。枠そのものを売る、というところから、ユーザーが広告主の定義するゴール地点までたどり着いたという「成果」をベースに販売することにしたんです。

 

プライシングのロジックが供給の量に応じて値段を決める仕組みから、「売上に対してその広告における成果がどのくらいの割合を担ったのか」というのを基準にプライスを決める仕組みに大きく切り替わったので、広告ビジネスそのものの価格崩壊を、「パフォーマンスを売る」というやり方にして切り抜けることができました。

これが、広告ビジネスという世界で生まれた新しい発明です。

 


成果が明確になり、広告に投資をしやすい環境に

 

実際、パフォーマンスはですね、超お金を稼ぐことができるんです。

めちゃくちゃわかりやすいですよね。「この広告をだしたらいくら物が売れた」というのがすごく明確な相関として理解できるようになったんです。

 

これまでは、CMの枠が「1GRP(※Gross Rating Pointの略。延べ視聴率。広告業界でスポットCMに用いる単位)あたりいくら」というのが決まっていたとして、実際にそれがどういう風に売上につながったかがわかりませんでした。

 

「広告宣伝費」って、そういうわからないものに投資をしているんです。しかし広告がパフォーマンスを販売するようになって、費用対効果がすごくわかりやすくなりました。

 

そういう「わかりやすいもの」には、当たり前ですけど企業は投資をしやすいわけです。すごく単純な算数でこの広告の投資が正しかったのか正しくなかったのかがわかるようになるということですから。

 

 

広告ビジネスを成功させたGoogle

 

で、Googleが広告ビジネスを本格化させたのが2001年とか2002年なんですけれども、だいたい10年強の間に、Googleは広告ビジネスの領域においても、No.1になりました。先ほども言ったのですが、広告ビジネスには200年くらいの歴史があるんですけれども、電通などのグローバルな歴史ある広告代理店を、10年あまりで抜き去りました。

Googleはだいたい、売上10兆円のうちの9兆円くらいを、広告の収益であげています。

 

そういう意味では、Google は世界で1番大きな広告会社ともいえます。

「パフォーマンス」という単位でものを売るようになって、お金がめちゃめちゃ稼げるようになりました。

 


 

 

デジタル広告市場の寡占

 

 

広がるGoogleとFacebookの“寡占”

 

デジタルマーケティングの歴史が始まってから、かれこれ20 年以上経つんですけれども、その 20 年の間に、ものすごいマーケットの寡占が生まれています。

 

今、グローバルでモバイル広告のマーケットシェアを見たときに、だいたい7割くらいがGoogleとFacebookの2社によって寡占されています。

 

実際、「デジタルマーケティングの年次成長は去年よりも今年の方が増えた」といううちの86%がGoogleとFacebookによって生み出されています。

なのでデジタルマーケティングの成長の9割近くがGoogleとFacebookの成長とニアリーイコールな状態になっているんですね。つまり、すごく大きな寡占が生まれているということです。

 

それはなぜかを単純に説明すると、デジタル広告においては「滞在時間」がすべてなんですよ。

 

「ユーザーがそのメディアにどれくらい長いこと滞在しているか」というのが、広告パフォーマンスと明確に相関するというような仕組みになっています。 

これは広告効果、つまり「パフォーマンス」とよんでいるものの計測方法に依存しています。

  

 

“コンバージョンの直前”にクリックされたメディアのみが評価される

 

今は、パフォーマンスというのは、すごくシンプルに定義されています。例えば、さっきも物件の広告をクリックしてページに辿りついて、いわゆる広告主が定義するゴール地点までユーザーが到達した、というのをパフォーマンスとしています。

 

これは「コンバージョン」というんですけれども、コンバージョンまで到達すると、そのメディアに評価がつく仕組みになっています。

しかし、実際ユーザーは、たまたまこのページで広告をクリックしてコンバージョンしたかもしれませんが、実はこの前に、他のページ、例えばLOCARI(ロカリ)を見ていて、そのときにもこの広告をクリックしたかもしれません。

 

でもLOCARIを見ている時はあまり時間がなくて、一旦「戻る」ボタンを押して、何もコンバージョンせずにサイトを離れたとします。

そっから1時間くらい経って、ちょっとひまになった時にたまたまNAVERまとめを見ていて、またこの広告が出てきた。今は時間があるから、このサイトに行って資料請求までやっちゃおうかなとなるわけです。

そうした時に、NAVERまとめとLOCARI、どっちが偉いんだっけ?っていうのを考えると、ちゃんと分析するのであれば、LOCARIも偉かった可能性がありますよね。

もともとの需要を創出したのはLOCARIを見ている時だったかもしれません。しかし、広告効果の測定ではLOCARIの評価は0ポイントで、NAVERまとめに10ポイント、つまり満点がつくという仕組みになっているのです。

 

この特性が今の寡占を生んでいるのですが、つまり結局何が言いたいかっていうと、どれだけ需要を創出するような広告を見せたメディアが事前にいくつあったとしても、広告効果として、「このメディアえらかったね!」って評価されるのは、コンバージョンの直前にクリックしたメディアだけなんですよね。

 

 

コンバージョンは“滞在時間”で決まる

 

そういう仕組みなので、じゃあどういうタイプのメディアが有利になるかというと、「滞在時間が長いメディアなんですよ。

1日のどのタイミングでもいいから広告をクリックする可能性が高い場所ってどこかというと、やっぱり1番長く見ているサイトなんです。

それが「Facebook」ですね。

 

なのでFacebookは、本来的には需要創出に貢献していないかもしれないけど、「たまたま最後に広告を押す場所」になりやすいんですよね。

理由は単純で、滞在時間が長いから。統計的にもFacebookが最後の広告クリックポイントになりやすいんです。

 

なので、いろんなメディアでじわじわ需要を創出しているわけですね。じわじわユーザーの動機は高まってきて、最後に、「ここで押そう」と。

そうなった時に、いわゆる需要を創出していた成果は、Facebookがすべて吸収しちゃうわけです。

このような構造があるがゆえに、すべての成果をもぎ取ってしまいます。


たとえば北米でいうと、GoogleとFacebookのスマホにおける滞在時間の割合が51%ぐらいを占めています。

なので、まあどっちかで最後クリックするでしょう。どれだけいろんな広告を見ていたとしても、最後にクリックする確率が高いのはGoogleとかFacebookですよね、と。


このように、彼らにどんどん数字が吸収されているというのが、今の広告業界、特にデジタル広告業界の風潮になっています。

 

  

これからのデジタル広告業界で生き残っていくためには?

 

じゃあどういう風に、このような超巨大なプラットフォーマーが市場を支配する時代の中で、独立系のメディアが生き残っていくかというのを考える必要があります。

 

 

①ブランド

 

ー無限のものを「有限」にする発想

 

いくつか考え方はあると思うんですけれども、1つは、「温故知新」じゃないですけど、やっぱりメディアは「ブランド」なんだ、という考え方です。

 

これまで広告成果で売ってきたわけだけれども、この新しい発明からもう15年が経過していて、そのやり方のダメな部分も見えてきている。それが寡占化につながっているわけですから。

 

そのダメな部分を認めた上で、やっぱりインターネットメディアにおいても、「希少性で広告枠を販売する術っていうのが、なくはないんじゃないか」という考え方です。今では、例えばクラシルみたいなメディアがトライしているやり方ですね。

 

「“クラシルに”出したい」と思う広告主さんをどれだけ増やすか。

インターネット全体の広告枠はどんどん増えてきているわけですけれども、「クラシルの広告枠」はやっぱり有限なんですよね。

 

じゃあその有限なものをどういう風に売っていくかというのは、まだまだ可能性があるんじゃないかなと思います。

 

 

ー「YouTube」問題

さらに言うと、最近このビジネスを後押しするようないろんな事象が起こっておりまして、1つはGoogleのYoutube問題

 

YoutubeはCGMで、すごいいろいろなコンテンツがあるサイトですよね。別にGoogleはコンテンツのクオリティに対して何か責任を持っているわけではないので、いろいろなコンテンツがあると。

 

そこに自動的に広告が差し込まれているわけですけれども、この前、テロ組織のリクルーティング動画の横に某大手広告主の広告が出てしまうということがありました。これは、広告業界的には本当に最悪なことだと言えます。

彼らは「Googleの広告枠はボイコットする。こういうクオリティーコントロールができないのはおかしい」と。

 

つまり、広告効果がどれだけ高かったとしても、どんなコンテンツがあるかわからないメディアに広告が出ていることは、その広告主のブランドにどういう意味をもたらすのか、というのをみんなが冷静に考えるようになったんですね。

 

やっぱり、ちゃんと身元がわかって、コンテンツクオリティーのコントロールがちゃんとなされているようなメディアに出さないと、金払っているのに、損すると。

 

自分たちのブランド価値が毀損されてしまうということにようやく気づいた広告主の一部が、こういう風にブランド価値のあるコンテンツの品質をちゃんとコントロールしているようなメディアに集中的に投資するというようなトレンドが 20 年経って戻ってきています。


これはテレビなどにおいても一緒です。

 

 

 

ー「アドフラウド」問題

 

で、もう一つは、「アドフラウド」という問題ですね。

 

アドフラウドというのは、不正にロボットなどを用いて、実際はフィジカルな広告効果は上がっていないのに、ロボットが広告をクリックしまくったり資料請求を行ったり、アプリを勝手にインストールしたりして、価値のない広告成果を大量にあげることです。

これによってメディアの価値を水増しして、お金を得るやばいやつらがいるんですよ。

 

しかも、彼らはすごいかしこいから、アプリをボットにインストールさせるだけじゃなくて、ちょいちょい開くんですよ。

 

これはなかなかわからないですよ。

リテンション(※既存顧客維持)してる!って思っちゃいますからね。

7days RR (7日後継続率) に入れちゃいますからね。

 

(会場:笑)

 

という風に、奴らはボットなりに賢くなっているんですよ。で、だんだん不正のユーザーとそうでないユーザーを見分けられなくなっていきます。

 

なので、app storeのランキングとか見ると、ちょっと翻訳が適当なカジュアルゲームアプリとかメディアアプリがあると思います。そういったアプリは、ほとんど広告効果で稼いでいても、その広告効果の大半が「嘘」なんですよね。

 

 

 

ー20 年を経て見直される広告の“ブランド”

 

なので、やっぱり怪しいメディアとか、よく知らないメディアに出すのは、意味ないねっていう風に、広告主側も感じはじめています。

 

それこそクラシルもそうだし、グノシーとかもそうだと思うんですけど、もう有名なメディア以外広告を出してないですもん。

 

いわゆるアドネットワークと呼ばれる、有象無象のメディアを大量に囲って、「はいどうぞ」とやっているような広告商品があるんですけれども、そういうところにはもう出さん、という風な流れに切り替わってきている。

 

なので、いかにしてメディアブランドをちゃんと確立して、「希少性がある場所として広告を出せるか」という風に、広告ビジネスがちょっとずつ変わってきているんですね。

 

 

 

 

②Old School

 

もう一つの方法がOld Schoolです。これは、いわゆるサブスクリプション(※ソフトを買い取るのではなく、利用した期間に応じて料金を支払う方式)のモデルと、広告のモデルを組み合わせてやっていこうという仕組みです。これはSpotifyがめちゃくちゃうまくやっています。

 

 

ー“Spotify”の広告ビジネス

 

Spotify、使ってますか?最近、日本でもオフィスができましたよね。

Spotify以外の音楽アプリっていうと、例えばApple MusicかLINE。こういったアプリは基本的には有料会員前提になっていて、「無料で1ヶ月は使えます」とか、そういうタイプのビジネスモデルが多いんですね。

基本的には「継続ユーザーはすべて有料会員です」という状況。

 

ところが、Spotifyに関しては、無料で永遠に使えます。

無料で永遠に使えるんですけれども、3曲に1回音声の広告が流れたりとか。曲のプレイリストの中に広告が出てきたりとかする仕組みです。

あとは、一部好きなようにプレイリストを組めないとか、有料会員じゃない人むけの不便さがあります。

 

無料ユーザーをちゃんと広告ビジネスに収益化して囲うことができれば、Spotifyの場合は、常に一定の割合で有料ユーザーに転換していくんですよね。

 

 

ー無料ユーザーを抱え込み、有料ユーザーになるのを待つ

 

無料ユーザーを広告ビジネスでとんとんにしておいて、あとは待っておくだけで、毎月数%のユーザーが有料ユーザーにコンバートしてくれる。

 

有料のビジネス、サブスクリプションのビジネス一本でやっている会社というのは、最初の1ヶ月だけで「はい、有料になるかサービスを使わないかを今すぐ選んでください」みたいな2択を突きつけて、無料で使い続けるユーザーを「買わないように」しているわけですけれども、実はユーザーを買い続けると、一定の割合で有料ユーザー転換してくれるんです。

 

ただ、例えば音楽再生ソフトでいうと、曲がストリーミングされればその分レーベルに費用が発生しますから、無料ユーザーというのは、おいておくだけで金がかかる金食い虫です。

 

その部分をいかに広告ビジネスでカバーして、少なくとも赤字にはならないぐらいまでに持っていくか。あとは有料ユーザーに転換していくのを待つばかり。というところで、ビジネスの可能性をすごく大きくすることができます。

 

特にツール系のメディアは、こういったやり方を実施することで、「有料ユーザーになりうる無料ユーザー」を抱え込んでビジネスを進めることができるので、非常に有利にビジネスを進められるようになるんじゃないかなという風に思っております。

 

 

 

 

③コミュニティー

 

最後がコミュニティーですね。

一番原始的なものが「サロンビジネス」と呼ばれるもので、「ホリエモン」や「はあちゅう」がやっているものです。

 

メディアがどうやってインタラクティブになっていくか。そのインタラクティブなやりとりがコンテンツになって、それにお金を払ってくれる人がどれくらいいるか。という仕組みです。

 

 

ー“コピーをさせない”仕組みを作る

 

やっぱり基本的に静的なコンテンツっていうのは、デジタルな世界では限界費用がゼロなので価値を出しにくいんですよ。

ユーザーからしても、「簡単にコピーできちゃうものなのに、それにお金を払うのかあ…」みたいな雰囲気ってありますよね。

 

その点、コミュニティのすごくいいところは、コンテンツが更新されることなんですよね。例えば、特定のホストに対してコメントがちょいちょいついていくみたいな。

 

コンテンツが更新されていくということは、コピーすることは難しくなります。そういう構造を持っているものは、デジタルの世界では値段をつけやすい、というロジックになっています。

 

 

 

 

注目の領域、「hobby tech」

 

今日いらっしゃっているような TNK のメンバーや学生さんがメディア運営するなら、終わりを迎えたキュレーションブームの後にやりやすそうだなーと思うのは、

「hobby tech」とか「lifestyle tech」と呼ばれる領域ですね。さっきの話でいうと、コミュニティーというパターンです。

 

 

ー「働き方改革」で余暇時間が増えている

 

今、趣味系のメディアがめちゃくちゃ伸びているんです。

労務の問題とかわかりますかね。某広告代理店の事件があって、すごく取りざたされて「働き方改革」とか言われていますけれども、結局あれは何かと言うと、労働時間規制が今より厳しくなるということなんです。

 

今の時点でも、一部の上場企業は労務問題を排除しようと必死になっていますから。労働基準法違反の会社の役員は逮捕されてしまいますからね。みんな一生懸命改善している。

 

で、それによってどうなるかというと、くっそ暇になっているんですね、みんな。

大人の皆さんは、18時とか19時にすぐ家に帰ってます。

 

IT業界のみんなが接している人はおかしいんですよ。みんなめっちゃ働いていますけど、世の中の大多数の人はみんな18時に家に帰っている。

 

あとインターネットの人たちは、飲み過ぎ。夜、元気すぎる。

 

(会場:笑)

 

普通のおじさんたちは金もないし、飲みにも月数回しか行かないし、そんな遊んでないです。

で、残業するなって言われてどんどん家に帰らされると。で、その人たちは暇じゃないですか。

 

 

 


 


ー会社が担っていた“帰属意識”は外へ向いてきている

 

働き方改革は、残業時間の話だけでなくて、成果で仕事の評価をされるという話なんですよね。時間じゃなくて成果なんですよ、と。

 

会社にいる「時間」ではなくて、アウトプットした「成果」で評価する、というような仕組みに、日本はどんどん変わっていっています。

 

すると組織に対する帰属意識とかが薄れていくので、帰属の欲求などは企業の外にどんどん向いていくようになります。

 

これまで日本は、会社がそういう機能を担っていることが多かったのですが、昨今のトレンドの中で「自分のいきがいを求める」とか「仲間との時間を求める」「何かに所属して安心したい」というのを会社以外で満たすという気持ちが、みんな異様に高まってきている。

 

なので、特に「趣味」を基軸にした情報メディアで、かつそれがコミュニティー化しているものって最近いくつか出てきていて。

 

そういうのは、「メディアの未来の新しい形」として、成立しそうだなー、みたいな感じまできているところです。

 

 

 

 

 

 

ーこれからの広告ビジネス

 

こんな感じで、そもそも今のデジタルマーケティングや広告のビジネスの環境は、もうとにかく寡占に向かいまくっていて、この流れが変わるっていうことはあまりないと思うんですよね。

 

これからもGoogleとFacebookは当分、王様としてシェアを伸ばしていくでしょうし、寡占は続いていくだろうと思います。

 

ただ、そういったマーケット環境があって、どうやってGoogleとFacebook以外のメディアが広告ビジネスのコンテクストの中で生き抜いていくかというのは、ここら辺の3つの方法に可能性があるんじゃないかな、と思っております。

 

本日はありがとうございました。

 

(会場:拍手)

 

 

 

参加学生の声

 

普段考えてこなかった広告の歴史についてご教示いただき、これまでの広告モデルの変遷について理解を深めることができました。今までの広告とこれからの広告、担う役割は同じだということを知り、一方で価値の置かれ方が変わってきているという気付きも得られ、非常に勉強になるイベントでした。(大学2年・男)


‪広告の起源を初めて詳しく知り、供給量による希少性からブランドによる希少性への広告の価値の変遷があったこと、そして働き方改革に伴うインターネットの社会的役割の変化が起こっていることなど、広告やインターネットのこれからにつながる話を非常に納得しながら聞くことができました。(大学2年・男)

  


あとがき

 

イベントの内容を全文にてご紹介をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。

 

TNKは、すでに上場している株式会社Gunosyの福島良典氏や、2016年クルーズ株式会社にM&Aされた株式会社Candleの金靖征氏といった実績のある起業家を何人も輩出しております。その背景には、本イベントのように上場経験のある経営者や、あらゆる領域のトップランナーの話を実際に聞き、目指すべき姿を明確にしながら必要な知識をインプットしています。

 

また、本イベントの協賛をしているEast Ventures様はVC(ベンチャーキャピタル)として、協賛だけではなく多くの学生や若手起業家に出資をしております。先ほどご紹介した「グノシー」や「KURASHIRU」といった多くの学生にも馴染みのある会社に投資をし、成功に導いております。その裏にはこのような学生への機会提供をはじめとした、多くの活動があるのです。

 

次回は、「インターネットの変遷とこれから」というテーマのイベントを紹介いたします。

 

登壇者:株式会社CAMPFIRE 家入一真氏

            BASE株式会社 鶴岡裕太氏

 

このエントリーをはてなブックマークに追加