「学生で起業した」と聞いて、皆さんはどう思うでしょうか?
高い行動力と起業へ踏み切る勇気が評価を受ける反面、「学生なのにうまくいくわけがない」と否定的に考える方も多くいらっしゃるでしょう。
確かに学生での起業は、ビジネスの経験、資金、人脈という三つの点で一度就職した人が起業する場合に対して、不利であるといえます。
まずは就職して、キャリアを積み、資金と人脈を確保してから起業に踏み切る方が堅実だ、と考えるのも一理あるとでしょう。
しかし、学生での起業には、いくつかのメリットも存在します。
今回はそうした学生での起業に伴う、メリットを紹介し、「学生で起業」という事実に対するまなざしを考えます。
起業は早ければ早いほど有利
例えば、皆さんが何か「儲かる」ビジネスモデルを思いついたとしましょう。
他の企業では気づかれていない、または気づいていても重点的には取り組まれていないビジネスモデルがあるとします。
しかし、時間が経てばどうなるでしょうか。他の企業がそのビジネスモデルに気づいて本格的に取り組みをはじめるかもしれません。または別の学生が同じビジネスモデルを思いついて、起業するかもしれません。時間が経てば経つほど、このように先手を取られる確率は高いといえます。
また、ビジネスモデルを構築し、市場で安定した地位を確保するには時間がかかります。
たとえ、他の企業が自社と同様のビジネスモデルを構築しはじめても、市場で安定した地位を確保しておけば、有利に戦えます。いわゆる「先発者優位」の原則です。
ビジネスの世界において、一度、先手を取られると、覆すには相当の努力が必要だといわれています。
もちろん、起業には「タイミング」があります。ある程度、市場が伸びてからビジネスに参戦するのも手でしょう。その意味で、新しいビジネスモデルを思いついた場合は、市場の動向を注視する必要があることを付け加えます。
たとえ失敗しても
学生で起業して実際に成功する人はわずかです。やはり学生にとって、起業はリスクが高いでしょう。
しかし、そもそも「成功」することだけに意味があるのでしょうか。
もちろん、起業した学生のすべては成功を志向しており、失敗を前提に起業する人はいません。起業するからには、成功をめざすのは当然でしょう。
しかし、ここでは「起業」の経験自体に注目してみましょう。まず起業するには、資金調達と人員確保はもちろん、組織運営からマーケティング戦略、PRとあらゆることを考えなければいけません。そのため、一般の大学生より、何倍も学び、考える必要があります。
実際に事業をはじめれば、利益率が頭打ちになることもあるでしょうし、組織運営上、問題が発生することもあります。そうした困難をどのように乗り越えたか、それ自体が経験として貴重であるといえます。
起業というと「成功」か「失敗」という観点で見られる場合がほとんどです。失敗確率が高いため、「どうせ失敗するからやめた方がいい」といった風潮が生まれるのも、ごく自然だといえます。
しかし、「経験」自体に着目するとどうでしょうか?
また、近年は、起業した経験を売りに有名企業から内定を得る人も増えています。自分で新しいアイディアを考え、それを実際にビジネスとして実現した学生は貴重であり、企業の間でも関心が高まっています。
学生起業へのまなざし
本稿では学生で起業するメリットを挙げましたが、一方で倒産によるリスクが存在することも厳然たる事実です。実力不足にも関わらず、「意識が高い」だけでうまくいくほど、起業は甘くはないでしょう。また、冒頭で言及したように学生での起業が必ずしも有利というわけでもありません。
学生で起業するか、もしくは就職してから起業するかのどちらが正しいか、ということはないでしょう。
なぜなら、いずれの場合にも成功事例があるからです。現に、元ライブドア社長の堀江貴文氏は東大在学中に起業していますし、楽天の三木谷浩史氏は日本興業銀行(現みずほ銀行)を経由してから起業しています。
ただ、本稿を通じて、「学生で起業した」という事実に対する「まなざし」が変われば幸いです。
「成功」か「失敗」という軸も確かに重要ですが、経験自体も一つの評価軸であるといえます。また、失敗に対しする評価が必要以上に厳しいことで、学生が挑戦しづらい日本の雰囲気は、あまりに勿体ないことではないでしょうか?