はじめに
広告業界と言えば、電通や博報堂等の企業をイメージし、その仕事は一般消費者のほとんどの目に触れるTVCMの企画制作や、東京オリンピック等の大規模なイベントのプロモーションなどを思い浮かべるのではないでしょうか。
そういった認識も間違いではありませんが、一口に広告業界といっても、その業態、職種は様々で、かつ、多様な側面から理解を深めることが可能です。
この記事では、広告業界の業態、職種、給与、勤務地、代表する企業、最近の業界の動向についてご紹介します。
広告業界で働くことのリアルを少しでも理解していただければ幸いです。
広告業界とは
広告業界では、自社の製品やサービスを広く認知させたい自社ブランドや、自社のイメージそのものを高めたいなど様々な課題を持つ広告主(クライアント)の課題解決を広告という手段によって行います。
テレビ、新聞、雑誌、ラジオなどの媒体を使った顧客のプロモーション戦略に適した広告手法の提案や、広告枠の取次をして手数料を得る広告代理店などがあります。
かつては、前述したマスコミ4媒体が上位を占めていましたが、近年インターネット広告が急速に売り上げを伸ばしており、シェアが大きく変化しています。
広告業界の動向
インターネット広告が1兆円の大台に
上述の通り、近年はインターネット広告が著しい成長を遂げており、2014年度には市場規模1兆円の大台に載りました。
一方で、雑誌・新聞等の紙媒体の市場規模は縮小傾向にあり、他業界と同様に紙から電子への動きが見られました。
インターネット広告では、アドテクノロジーの発展がその拡大に貢献しています。
サイトの特定の場所に広告を載せる「枠売り」から、サイト閲覧者の興味や反応に応じて、より広告効果が高い相手に広告を出すことができるようになりました。
海外事業とデジタル事業を強化
国内1位の電通が海外展開を強化する一方で、国内2位の博報堂DYホールディングスも海外展開とネット領域の強化に取り組んでいます。
2015年7月には企業ブランディングに定評のあるカナダの広告会社シドリーを買収し、16年には自前のアニメーションスタジオを開設しました。
近年WEB上での動画広告が増え、企業からはオリジナルコンテンツとしてのアニメーション動画への需要が高まっており、それらに対応するのが狙いであると考えられます。
広告業界を代表する企業
広告代理店売上高ランキング(※2015年度時点)
1位:電通:1兆5,351億円
2位:博報堂DY HD:6,587億円
3位:アサツーディ・ケイ:3,520億円
4位:サイバーエージェント:1,421億円
5位:大広:1,400億円
6位:デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム:1,174億円
7位:ジェイアール東日本企画:1,052億円
8位:東急エージェンシー:954億円
9位:株式会社読売広告社:716億円
10位:株式会社オプト:640億円
広告代理店の種類
広告会社の種類には、電通、博報堂、ADKなどの総合広告代理店のほかに、交通広告がメイン、看板広告がメイン、チラシがメインと取り扱い媒体が特定の媒体に特化している専門広告代理店があります。
また、広告主を親会社に持ち、主に親会社の広告活動を手助けするハウスエージェンシーと呼ばれる広告代理店もあります。
そして近年急増しているのが、インターネット系の広告代理店です。
中でもトップを走るサイバーエージェントは1998年設立と比較的若い会社ですが、売り上げ規模は既に1,000億円を超えており、急成長を続けています。
売り上げ高から原価や人件費を差し引いた儲けを示す営業利益ベース(※2012年3月期時点)で比較すると、電通が520億円で業界1位、博報堂DYホールディングスが198億円で業界2位、ADKが32億円で業界3位となっています。
業界1位と2位、2位と3位の間で大きな差があることがわかりますが、各社の特徴を理解し、動向を把握することでその理由をさらに明確なものにしていきましょう。
海外展開を急速に進める、広告業界不動のトップ電通
電通が国内で不動の地位を築くことができる所以は、枠の買い切りによって自社でしか扱えない枠を数多く保有しているためです。
枠を買い切ることは、枠を売り切れないと大きな損失を被るなどのリスクを伴いますが、これは多くの広告主・大企業をお得意先として抱えている電通だからこそ為せる技であると言えるでしょう。
広告代理店として国内で不動の地位を築く電通ですが、一方で海外展開を急速に進めています。
M&Aを海外展開戦略の中枢に据えており、2012年は3社に留まっていた買収の案件数も、2013年には12社、2014年には15社、2015年には21社と、年々加速させ、その規模も拡大しています。
その結果、電通の海外ネットワークは124カ国300拠点、売上総利益6769億円、海外グループ従業員4万300人の規模にまで拡大しており、営業利益のうち、国内46.2%に対して海外比率は53.8%と、すでに利益の半分以上を海外で稼ぐまでになっています。
ノウハウの買収を行い、電通に続く海外展開を画策する博報堂
広告代理店国内2位の博報堂DYホールディングスは、博報堂を中心とする広告代理店の持株会社です。
2013年11月に発表した2019年3月期までの中期経営計画では、広告事業のみに留まらず、マーケティング戦略の企画・提案など、企業に対するコンサルティング事業を成長事業と位置づけました。
枠取りに徹し、広告代理店が、顧客の注文通りに広告を作るだけの時代は終わったとして、自らアイデアを提案する形に移行することを宣言しました。
しかし博報堂DYホールディングスはそういった分野には強くはないため、北米や欧州の専門的・先進的なマーケティング手法を提供する企業の買収を使命とする戦略事業組織「kyu」を立ち上げました。
同時に、米国の専門マーケティング会社であるSYパートナーズ、Red Peak Groupを買収し、欧米への進出の足掛かりとしています。
そして2015年1月には企業の広報支援などを手掛ける、英国のアシュトン・コンサルティングの株式の65%を取得し、6月には多くのクリエイティブアワードを獲得している米国のDigital Kitchenを完全子会社しました。
その後も継続的に同様の動きを見せており、宣言通りに、専門性が高く、世界に通用するノウハウの買収を仕掛けています。
広告業界の主な職種 / 仕事内容
広告代理店の仕事の流れ
広告代理店の仕事は、まずは企画することから始まります。
広告主の課題を引き取ってきた営業マンが、課題の性質に合わせて社内のスタッフを招集します。
マーケティング戦略の構築が必要ならマーケティング・セクション、プロモーション企画が必要ならプロモーション・セクションといった具合に特定の領域に特化したセクションスタッフを課題に合わせて招集します。
便宜上それぞれの部署の専門性を高めるためにセクションが分けて設けられていますが、クライアントを納得させることのできる企画が考えられれば誰がどの部分を考えても構いません。
そういう意味では社内の人間全員がプランナーであるとも言えます。
広告主に企画が採用されると、実施段階に入ります。
ここでも実施に適したセクションが営業によって招集されます。
広告主とコミュニケーションを取りながら、いかに円滑に仕事をすすめ、質の高いアウトプットを世に出すかが広告代理店の手腕の見せ所になります。
営業職
広告代理店は、広告主の依頼する広告業務を実行することで報酬を得ています。
その広告主との交渉窓口になり、社内の他部門のスタッフを動かすのが営業職です。
営業職の業務は多岐にわたりますが、大きく分けるとクライアントとの交渉、スタッフ・セクションとの交渉となります。
営業職は、広告主に対しては、まず自分たちの会社の売り込みから始まり、広告主の情報収集から課題発見、本質的ニーズを理解するため、高いコミュニケーション能力が求められます。
また、スタッフ・セクションに対して、広告主の課題を的確に伝え、方向性の提示や、スタッフ・セクションから上がってきた企画が求められているものかどうかを判断する力が求められます。
メディア職
広告代理店において、広告枠の仕入れを行うのがメディア職です。
しかし、通常の発注者と受注者の関係にならないのが、広告代理店と媒体各社との関係です。
お互いに貸し借りをしながら、うまく物事を進めていく、というバランス感覚が求められます。
営業から聞いている広告主のオーダー通りに、いかに良い条件で媒体各社から枠を買うことができるかが腕の見せ所です。
また交渉だけでなく、メディアと連携して営業サイドに対して、こんな内容でこういう媒体の使い方をしたらどうかと提案することも頻繁に求められます。
クリエイティブ職
広告代理店の仕事と聞いて一般の方が真っ先に思い浮かべるであろう「CMを作っている人」に該当するのがクリエイティブ職です。
クリエイティブ職の業務は広告制作業務全般になりますが、クリエイティブの中でも役割を分けているのが一般的です。
CMプランを立てるCMプランナー、グラフィックの企画制作を担当するアートディレクター、CMとグラフィック両方の文字要素を担当するコピーライター、そしてそれら全体を束ね、広告制作の方向性や戦略立案を行うクリエイティブディレクターです。
これらの人たちがチームを組んで1つの案件に対応します。
マーケティング職
広告主の関わる市場・競合状況を調査するリサーチ業務を行い、最も効率良く、最大の効果を上げるためのマーケティング戦略の立案を行うのがマーケティング職です。
各所から情報収集を行い、広告戦略に期待できる効果の仮説を立て、それをリサーチ等によって肉付けします。
最近ではインターネットを使った調査等も可能になり、以前より手軽に情報収集することが可能になりました。
プロモーション職
消費者に実際に広告主の商品・サービスを手に取ってもらうために、イベント・キャンペーン・SNS等を使った企画を実施するのがプロモーション職です。
企画を立てる際には、マーケティングやクリエイティブも含めた広告計画全体のプロモーションを社内で中心となって考える場合や、キャンペーンやイベント、店頭に特化して企画を行う場合があります。
企画のみを行って実施は担当者が変わる場合もありますが、企画者が実施まで行うほうが消費者の反応を含めたノウハウの蓄積や、広告主が安心できる等の理由から、企画から実施までをマーケティング職が請け負う場合がほとんどです。
デジタル職
デジタル領域におけるマーケティング戦略やプロモーションを企画し、最適なデジタル・ソリューションを提供するのがデジタル職です。
まず媒体系の業務としてテレビや新聞を扱うメディア・セクションと同じように媒体各社とやりとりをし、効率を重視したメディアプランニングを行わなければなりません。
また、制作系の業務としてサイトのデザイン、コピーなどを指示するプロデュース能力も問われます。
広告業界の給与事情
広告代理店の平均年収
広告代理店の年収:575万円~675万円
広告代理店の企業数:主要約22社~中小合わせて業界全体で約1,500社以上です。
広告代理店の年収ランキング
1位:電通:約1,143万円
2位:博報堂DY HD:約1,021万円
3位:アサツーディ・ケイ:約776万円
4位:サイバーエージェント:約716万円
5位:バリューコマース:約590万円
6位:ゲンダイエージェンシー:約570万円
7位:クイック:約566万円
8位:プラップジャパン:約563万円
9位:共同ピーアール:約550万円
10位:セプテーニ・ホールディングス:約546万円
広告業界内定の秘訣 / 選考対策
広告業界内定のポイント
広告業界は志望する学生が非常に多い人気の業界ですので、他の学生といかに差別化を図るかがポイントになります。
その際に重要になるのが、エントリーシート、面接等の選考を突破するための対策と、志望企業との接触回数です。
エントリーシートや面接対策については他の企業と大した差はありませんが、特徴的なのが接触回数が評価の対象となる点です。
あくまで噂の範囲ですが、電通や博報堂等の人気企業は学生ごとの接触回数をカウントしており、その数に応じて点数をつけているようです。
就職活動期間中の動きとしては説明会やOB訪問で志望企業との接触回数を稼ぎつつ、採用担当者や社員の方とのコミュニケーションを通じてエントリーシートや面接対策を行なっていくのがベストでしょう。
エントリーシートを書く際のポイント
広告業界は各社がそれぞれ定めるフォーマットに従ってエントリーシートを作成する必要があります。
これは広告業界が就活生から人気の業界であるため、敢えて多めの分量のエントリーシートで受験者の意思の強さを確かめるためでもあります。
エントリーシートは見やすく丁寧な字で、自分の広告を作るつもりで書いてみるといいでしょう。
本気で入りたいという意思を示す志望動機と、会社において自分がいかに成果を出すことができるのかを重点的に書くことが選考突破の秘訣です。
面接を受ける際のポイント
面接では主にコミュニケーション能力を評価されます。
質問に的確に答えているか、回答時間は適切か、唐突な質問にも対応できているかなどです。
もちろん回答の内容も大切ですが、その答え方、立ち振る舞いについても評価されます。
また、自己分析を行い、広告という存在を自分自身としっかりと結びつけておくことが重要です。
広告に興味を持つきっかけ、自分のどんな能力が広告において活かせるのか、どんな仕事をしていきたいのかなど、広告と自分自身を結びつける作業です。
その結びつきが強ければ強いほど、面接官に説得力を与えることができます。
おわりに
いかがでしたでしょうか。広告業界で働くことのリアルについて理解を深めることができたかと思います。
とはいえ記事を読むだけでは理解することはできても、経験の伴わない知識の範囲を超えることはできません。
時間の確保が可能な方は広告業界の長期インターンに参加することをおすすめします。
それが難しい場合にも少なくとも短期インターンには参加しておくべきでしょう。
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エントリーシートや面接の対策は就職活動にも共通する部分がありますので、少しでも興味を持った方は是非ご参加ください。
今すぐに準備を始めて広告業界内定を目指しましょう。
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